THE Wへの批判は、単に「女性芸人のネタが面白くない」という話ではない。実際には、決勝に進出する芸人の実力差、ネタの構成、審査員の評価、番組の進行方法など、複数の問題が重なっている。
1. 決勝進出者のネタに実力差がある最も多く議論されるのが、ファイナリストのネタの完成度だ。
2025年大会では、過去最多の1,044組がエントリーした一方、決勝に進出したのは8組だった。2022~2024年大会の決勝進出者は各12組だったため、2025年は4組減少している。
テレビ解説者の木村隆志氏は、マイナビニュースの記事で、決勝進出者の人数が減ったことや、結成1年のグループが複数含まれていたことを取り上げ、大会のレベルをめぐる問題を論じている。
ただし、芸歴が短いことは必ずしも実力不足を意味しない。結成間もない芸人が決勝に進めるのは、新しい才能を発掘する大会としての強みでもある。問題は、経験の浅い芸人と実績のある芸人が同じ舞台に立ったとき、ネタの完成度に差があると視聴者に感じられる点だ。
2. ネタのジャンルが幅広く、比較しにくいTHE Wは漫才、コント、ピン芸、モノマネ、パフォーマンスなど、ジャンルを問わず出場できる。
この自由度は大会の魅力だが、同時に審査を難しくする要因でもある。
例えば、テンポの速い漫才と、人物設定をじっくり見せるコントでは、笑いが生まれるタイミングも評価すべき技術も異なる。独特の世界観を持つピン芸と、複数人で展開するコントを同じ基準で比較するのも簡単ではない。
視聴者が求める笑いと審査員が評価する技術が一致しなければ、「自分なら別の芸人を選ぶ」「なぜこのネタが勝ったのか」という不満につながる。
3. ネタの面白さより番組の演出が気になる賞レースでは、ネタを見て笑い、審査結果を見届けるという流れが基本になる。しかし、審査員のコメントや出演者のリアクションが長く続くと、ネタそのものに集中しにくくなる。
特にTHE Wでは、出演者の紹介、ブロックごとの勝ち残り、敗者復活投票、最終決戦といった複数の進行要素がある。
この構成を楽しめる人にとってはドラマ性がある一方、純粋にネタを連続して見たい人にとっては、番組のテンポが悪く感じられる可能性がある。
4. M-1などの賞レースと比較されるTHE Wは優勝賞金1,000万円という大きな賞金を掲げている。M-1グランプリと同額であるため、視聴者が両大会のネタの完成度や大会の権威を比較するのは自然な流れだ。
しかし、出場者の条件も競技形式も異なる。THE Wは女性芸人を対象とし、芸種や人数に制限を設けない大会だ。M-1は結成15年以内の2人以上の漫才師を対象とする。
異なる競技を同じ尺度だけで評価すれば、THE Wに不利な比較になりやすい。大会の目的と参加条件を踏まえて評価する必要がある。
【2025年大会を検証】粗品の辛口審査とニッチェ優勝の意味

THE Wの評価を語るうえで、2025年大会は大きな転換点になった。
その理由は、優勝したニッチェだけでなく、初めて審査員を務めた霜降り明星・粗品の存在が大会全体に大きな注目を集めたからだ。
粗品が指摘した「賞金1,000万円に見合うレベルなのか」という問題2025年12月13日の決勝では、粗品が他の審査員とは異なる厳しい姿勢で出場者のネタを評価した。
大会前から辛口審査を予告していた粗品は、実際の放送でもネタの完成度について具体的に指摘。特にパンツ万博への評価は厳しく、視聴者の間でも大きな話題になった。
大会終了後には、次のように総括している。
「賞金1000万円にしては、レベルの低い大会やったと思うんですが、でも、面白い人も何組かいたし、最終決戦残った3組の方も、これからももっと活躍してほしいです。ニッチェさん優勝おめでとうございます」
この発言には、厳しいことを言う姿勢を評価する声と、出場者への敬意を欠くように感じるという批判の両方があった。
一方、お笑い評論家のラリー遠田氏は、粗品の審査によって、これまで曖昧になりがちだったネタの評価が明確になり、視聴者の納得感につながったと分析している。
重要なのは、粗品が単に辛口だったことではない。面白い部分と改善すべき部分を区別し、芸人をプロとして評価する姿勢が注目された点だ。
2025年の優勝者はニッチェ
江上敬子・近藤くみこ
過去最多1,044組の頂点に立ち、マセキ芸能社所属として初の賞レース優勝を達成した。
2025年の最終決戦に進んだのは、紺野ぶるま、ニッチェ、敗者復活枠のエルフの3組だった。
審査員7人による投票では、ニッチェが3票、エルフが2票、紺野ぶるまが2票を獲得。ニッチェが9代目女王となった。
結成21年目を迎えたニッチェにとって、7年ぶり3度目の決勝進出でつかんだ優勝だった。長年の活動を経て賞レースの頂点に立ったことは、THE Wがベテラン芸人にも大きなチャンスを与える大会であることを示している。
THE Wの視聴率は上がったのか?視聴率を比較すると、2025年大会は2024年大会をわずかに上回った。
THE W 20246.6%
平均世帯視聴率
THE W 20256.7%
平均世帯視聴率
2024年大会は平均世帯視聴率6.6%、2025年大会は6.7%だった。いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区の数字である。
2025年大会の個人平均視聴率は4.1%。粗品の辛口審査が話題になった一方、世帯視聴率は前年から0.1ポイントの上昇にとどまった。
この結果から分かるのは、粗品の起用によって話題性が高まったことと、視聴率が大幅に伸びたことは別問題だという点だ。視聴率だけで大会の面白さや評価を断定することはできない。
【審査基準の問題点】なぜ視聴者と審査員の評価が食い違うのか
THE Wの審査基準は、日本テレビの2025年大会公式募集要項で「とにかくおもしろい芸」と定められている。
漫才やコント、ピン芸などジャンルを問わないことは明記されているが、視聴者が採点の根拠を細かく確認できるような統一配点表が公開されているわけではない。
2025年大会の審査方式2025年は、従来の大会から決勝の進行方式が変更された。
ファーストステージ
ファイナリスト8組をA・Bの2ブロックに分け、各4組が対戦する。
ブロック勝ち残り
審査員7人の投票で勝ち残る芸人を決定し、各ブロックの勝者が最終決戦に進む。
視聴者投票による敗者復活
ブロックで敗れた6組の中から、もう一度ネタを見たい芸人1組を視聴者投票で選出する。
最終決戦
A・Bブロックの勝者と敗者復活の1組、合計3組を審査員7人が投票で評価する。
この方式では、審査員の判断が各対戦の勝敗に直接影響する。加えて、敗者復活には視聴者の意見が反映されるため、プロの審査と一般視聴者の評価が異なる場合もある。日本テレビの公式ルールにも、8組のネタをすべて視聴した人の投票を集計する仕組みが記載されていた。
審査基準が分かりにくいと感じる理由視聴者が疑問を抱きやすいのは、審査員によって笑いの好みや評価する技術が違うからだ。
ある審査員は構成や伏線の回収を重視し、別の審査員は瞬間的な爆発力や演技力を評価する。どちらもお笑いの専門的な評価として成立するが、評価軸が明示されていなければ、視聴者には結果だけが先に見える。
また、点数制ではなく投票制であるため、1票の違いがそのまま勝敗に結びつく。僅差の勝利でも、どの技術が勝因だったのかを視聴者が把握しにくい。
2025年の粗品の審査が注目された背景には、こうした審査の見えにくさがあった。審査員が評価理由を具体的に説明すれば、大会の透明性と納得感は高まりやすい。
【歴代優勝者一覧】THE Wは本当にレベルが低い大会なのか
THE Wは2017年にスタートし、2025年まで9大会が開催された。優勝者には、テレビで活躍する芸人や、ほかの賞レースでも評価を得た芸人が並ぶ。
歴代の優勝者とエントリー数を確認すると、大会がどのように成長してきたのかが見えてくる。
| 開催年 | 優勝者 | エントリー数・視聴率 |
|---|---|---|
| 2017年 | ゆりやんレトリィバァ | 636組 |
| 2018年 | 阿佐ヶ谷姉妹 | 606組 |
| 2019年 | 3時のヒロイン | 627組 |
| 2020年 | 吉住 | 646組 |
| 2021年 | オダウエダ | 700組 |
| 2022年 | 天才ピアニスト | 735組 |
| 2023年 | 紅しょうが | 863組 |
| 2024年 | にぼしいわし | 903組・視聴率6.6% |
| 2025年 | ニッチェ | 1,044組・視聴率6.7% |
出典:日本テレビ大会情報、TV LIFE、スポニチアネックス、日刊スポーツ。視聴率は2024・2025年の関東地区平均世帯視聴率。
歴代優勝者を見ると、THE Wが単なる一時的なテレビ企画ではなく、女性芸人の活動機会を広げる舞台として機能してきたことが分かる。
歴代女王から見える大会の実績
ゆりやんレトリィバァ(2017年)
初代女王。後にR-1グランプリでも優勝し、国内外で活動する芸人として知名度を高めた。
阿佐ヶ谷姉妹(2018年)
独特の歌ネタや日常を切り取ったコントで、幅広い世代に親しまれている。
3時のヒロイン(2019年)
優勝をきっかけにテレビ出演を増やし、バラエティー番組でも活躍した。
吉住(2020年)
独創的な設定と人物描写を生かした一人コントで評価を得た。
紅しょうが(2023年)
漫才を武器に優勝。女性コンビの活躍を印象づけた。
にぼしいわし(2024年)
フリーで活動するコンビとして優勝し、所属事務所に左右されない大会の可能性を示した。
ニッチェ(2025年)
7年ぶり3度目の決勝進出で優勝。長年の経験を実績につなげた。
この顔ぶれを見れば、THE Wの優勝者が必ずしも大会内だけで評価されているわけではないことが分かる。
一方、歴代優勝者が活躍している事実と、毎年の決勝ネタがすべて高水準だったかどうかは別の問題だ。優勝者の実績だけで大会全体の品質を判断することも、逆に一部のネタへの不満だけで女性芸人全体の実力を評価することも適切ではない。
【女性限定大会の賛否】THE Wは必要だったのか
THE Wをめぐる議論で避けて通れないのが、女性芸人限定という参加条件だ。
性別によって出場できる大会を分けることには、活躍の機会を広げるというメリットがある一方、女性芸人を男性芸人とは別の枠に分類することへの疑問もある。
女性限定大会を評価する意見THE Wの大きな役割は、女性芸人に特化した全国規模の賞レースを設けたことだ。
お笑いの世界では、漫才、コント、ピン芸など多様なジャンルで男女が競う大会が存在する。しかし、女性芸人だけに焦点を当てる大会があれば、これまで目立つ機会が少なかった芸人にもテレビでネタを披露するチャンスが生まれる。
実際に、歴代優勝者にはゆりやんレトリィバァ、吉住、紅しょうが、にぼしいわしなど、異なる芸風を持つ芸人が並んでいる。
優勝後に日本テレビ系の番組への出演権や冠特番が用意される点も、芸人にとって大きなメリットだ。大会が新人発掘や知名度向上の機能を果たしてきたことは、日本テレビ側も2026年の説明で認めている。
女性限定に対する批判一方、女性限定という条件そのものに疑問を持つ人もいる。
性別を問わない大会で実力を競う方が公平ではないか、女性芸人だけを別枠にすると、かえって女性芸人の評価を低く見せてしまうのではないか、という意見だ。
お笑い評論家のラリー遠田氏も、女性芸人限定の大会には、活躍の場を提供する意義がある一方、女性限定であることによって大会のレベルをめぐる批判が生まれ、女性芸人全体への偏見につながる難しさがあると指摘している。
ここで区別したいのは、女性芸人個人の実力と、参加者を限定した大会の競争環境は同じではないということだ。母数や出場資格が違えば、競技の構造も変わる。特定の大会の結果を女性芸人全体の能力に結びつけるのは短絡的である。
女性限定と男女混合、どちらが望ましいのか女性限定の大会には、特定の出演者に光を当てられる利点がある。男女混合の大会には、参加者の幅を広げ、より大きな競争環境を作れる利点がある。
どちらか一方が絶対的に正しいという問題ではない。重要なのは、女性芸人が性別を問わない大会でも女性限定の大会でも、実力によって評価される環境を確保できるかどうかだ。
【THE WとM-1を比較】つまらないと感じるのは大会の違いが原因?
THE WとM-1グランプリは、どちらも優勝賞金1,000万円を掲げる大規模な賞レースだ。しかし、競技の条件や目的には大きな違いがある。
| 比較項目 | THE W | M-1グランプリ |
|---|---|---|
| 主な参加条件 | 女性芸人 | 性別不問 |
| 芸種 | 漫才・コント・ピン芸など | 漫才 |
| 人数 | 制限なし | 2人以上 |
| 芸歴・結成年数 | 制限なし | 結成15年以内 |
| プロ・アマ | 問わない | 問わない |
| 優勝賞金 | 1,000万円 | 1,000万円 |
上記はTHE W 2025とM-1の参加規定をもとにした比較だ。
エントリー数の違い2025年のエントリー数は、THE Wが1,044組、M-1が11,521組だった。
参加者数には約11倍の差がある。ただし、THE Wは女性芸人限定で、ピン芸やコントなども対象にする一方、M-1は2人以上の漫才師に限定される。単純に人数だけで大会の質を比較することはできない。
それでも、参加者の母数が大きい大会ほど、多様な芸風や経験を持つ出場者が集まりやすいという競争環境の違いはある。
M-1の方が面白いと感じる人がいる理由M-1は漫才に競技を絞っているため、視聴者は漫才の構成、ボケとツッコミの精度、テンポ、言葉選びなどを中心に比較できる。
一方、THE Wはさまざまなジャンルが同じ大会に集まるため、視聴者が何を面白いと感じるかによって評価が分かれやすい。
つまり、THE Wがつまらないと感じる人の中には、漫才の完成度を重視している人もいれば、M-1のように競技のルールが統一された大会を好む人もいる。
THE WをM-1と同じ基準だけで評価するのではなく、異なる芸種を集める大会として何を実現しているかを見ることが、より公平な比較につながる。
【2026年最新】THE Wは開催終了?日本テレビが見送りを説明
2026年のTHE Wについては、日本テレビが開催しない判断を明らかにしている。単なる放送日程の変更ではなく、大会の今後を考えるうえでも重要な動きだ。
2026年7月:日本テレビが大会の終了に言及2026年7月13日、日本テレビは定例会見でTHE Wの今後について説明した。
岡部智洋常務執行役員は、歴代優勝者がさまざまな番組で活躍していることや、スター発掘の面で良い番組だったことを評価。そのうえで、大会として一定の役割を果たしたという判断で終了する形になると説明した。
ただし、来年以降については「まずは今年は放送しないという判断です」とも述べている。
2026年9月:男女の壁がない大会に注力する方針さらに9月10日の日本テレビの改編説明会では、開催を見送った理由について、コンテンツ戦略局の大井秀一氏が説明した。
「性別の壁がないより間口の広いコンテストに注力していきたい」
背景にあるのは、2026年夏に放送された「ダブルインパクト」への注力だ。同大会は男女の制限を設けず、より幅広い芸人が競える舞台として位置づけられている。
THE Wの今後の実施可能性については、日本テレビ側は「いまお答えできることはございません」と回答した。したがって、2026年の開催見送りは確定しているものの、将来的な復活については明確な発表がない状態だ。
THE Wがなくなることで何が変わる?大会が開催されなくなれば、女性芸人が全国放送の賞レースで優勝賞金1,000万円と冠特番を目指す機会が一つ減る。
一方、男女混合の大会が発展すれば、性別にかかわらず芸人が同じ舞台で競う機会が増える可能性もある。
ただし、THE Wが担っていた女性芸人の発掘や知名度向上という役割を、ダブルインパクトがそのまま引き継げるとは限らない。女性芸人が決勝に進出する機会や、優勝後のメディア露出をどのように確保するかが、今後の注目点になる。
【よくある質問】THE Wがつまらないと言われる理由
Q1:THE Wがつまらないと言われる最大の理由は何ですか?
主な理由は、決勝進出者のネタの完成度の差、ジャンルの異なる芸人を比較する難しさ、審査基準の分かりにくさなどです。視聴者が期待する笑いと審査員の評価が食い違うことも、不満につながっています。
Q2:THE W 2025の優勝者は誰ですか?
ニッチェです。2025年12月13日の決勝で、紺野ぶるま、エルフとの最終決戦を制し、9代目女王に輝きました。
Q3:THE W 2025の視聴率は何%でしたか?
平均世帯視聴率は6.7%、個人平均視聴率は4.1%でした。2024年大会の平均世帯視聴率6.6%から0.1ポイント上昇しています。
Q4:THE Wは2026年も開催されますか?
2026年は開催されません。日本テレビは大会として一定の役割を果たしたと説明し、性別の制限がない「ダブルインパクト」への注力を明らかにしています。将来の復活については明言していません。
Q5:THE WとM-1グランプリはどちらがレベルが高いですか?
単純な優劣はつけられません。M-1は漫才に特化した大会で、THE Wは漫才・コント・ピン芸など幅広いジャンルを対象にしています。競技条件や参加者の母数が異なるため、比較する際にはそれぞれの特徴を考慮する必要があります。
THE Wがつまらないと言われる背景には、ネタの完成度、審査の透明性、決勝の進行、女性限定という大会形式など、複数の論点が存在する。
2025年大会では、粗品の辛口審査によって、これまで表面化しにくかったネタの評価基準や大会の課題が改めて注目された。一方で、ニッチェが1,044組の頂点に立ち、2024年から視聴率もわずかに上昇している。THE Wを単純に失敗した大会と評価することはできない。
歴代優勝者の活躍を見れば、女性芸人の才能を発掘する場として一定の成果を残してきたことも分かる。批判されてきた部分と、実際に果たしてきた役割は分けて考える必要がある。
そして2026年、日本テレビはTHE Wの開催を見送り、男女の壁がない大会に注力する方針を示した。今後問われるのは、女性限定という枠組みをなくすことだけではなく、性別に関係なく芸人が公平に評価され、才能を発揮できる舞台をどう作るかという問題だ。
THE Wの9年間は、女性芸人の賞レースに何が必要なのかを考える一つの実績となった。2025年のニッチェの優勝を最後に、その役割がどのような形で引き継がれるのか。日本のお笑い賞レースの今後を占ううえでも、見逃せない変化である。