マグロ漁船では、乗船経験を積み、専門資格を取得することでキャリアアップを目指せる。
新人として甲板員や機関員からスタートし、航海士や機関士などの船舶職員を経て、船長や漁撈長を目指す道がある。
新人・経験者・船舶職員の収入の違い日本かつお・まぐろ漁業協同組合が2017年に公開した乗組員向けの収入案内では、遠洋まぐろ延縄漁船の給与モデルとして、次の金額が紹介されている。
- 新人乗組員(員級B):月収30万~34万円以上、年収360万~410万円以上
- 経験を積んだ員級A:月収38万~42万円、年収450万~510万円以上
- 一等航海士:月収48万~58万円、年収580万~650万円以上
- 船長・機関長:月収64万~72万円、年収770万~1,000万円以上
これは2017年時点の組合によるキャリアモデルであり、2026年の統一的な給与相場ではない。ただし、経験年数だけでなく、海技資格や職位によって収入が大きく変わる構造を理解する参考になる。
船長になるには何年かかる?船長になるまでの期間は、乗船経験、保有資格、会社の育成方針などによって変わる。
株式会社太和の求人情報では、約2年間の乗船履歴を積み、海技士資格を取得することが給与アップにつながると説明している。また、同社は5年目で船長になった乗組員の例も紹介している。
もちろん、5年で誰もが船長になれるわけではない。船の規模や必要な海技免状、実務能力などが関係する。
主なキャリアの流れは次のとおりだ。
1. 甲板員・機関員:漁労作業や機関整備などの基本を習得する。
2. 経験者・上位船員:操業技術や船内業務への理解を深める。
3. 航海士・機関士:海技資格を取得し、船舶職員として専門的な業務を担当する。
4. 船長・機関長・漁撈長:船の運航や漁労全体を管理する立場を目指す。
漁撈長は、漁獲活動を指揮する専門的な役職だ。
漁場の状況を判断し、操業計画や漁労作業を管理する役割を担う。船長が船の運航や安全管理を中心に責任を持つのに対し、漁撈長は漁獲活動の成果に深く関わる。
両者の役割は異なるものの、船の規模や組織体制によって職務分担は変わる。
マグロ漁船で高収入を目指すなら、単に乗船年数を増やすだけでなく、海技資格と漁労技術の両方を身につけることが収入アップにつながる。
【休漁期の給料と待遇】航海が終わった後も収入はある?

マグロ漁船への就職を検討する人が見落としやすいのが、休漁期の給与だ。
遠洋漁業は1航海が長いため、航海中の月収だけを見ても年間の収入は正確に把握できない。
休漁期にも給料が支給される求人がある2026年に掲載された株式会社太和の求人では、給与条件について次のように説明している。
- 漁期中:最低保証25万円/月+歩合
- 休漁期:12万~13万円/月
- 休漁期:約2か月
- 年間休日:70~80日程度
つまり、漁期中と休漁期で給与水準が異なる。
休漁期に月12万~13万円が支給されることは、収入の空白を避けるうえで大きなメリットだ。
ただし、これは株式会社太和の個別求人に記載された条件であり、すべてのマグロ漁船に共通する待遇ではない。
焼津まぐろ漁業株式会社は航海終了後40~50日の休暇焼津まぐろ漁業株式会社の公式採用情報では、航海終了後に40~50日程度の休暇が設けられている。
同社の年間スケジュールには、7月の焼津出港、8月の南インド漁場での操業、10月のインド洋ジャワ沖漁場での操業、翌年4月の焼津帰港という流れが紹介されている。
長期航海を終えた後にまとまった休暇を取得できる点は、遠洋漁業ならではの働き方だ。
一方、公式採用情報では休暇期間中の給与額までは明示されていない。休暇が有給なのか、休漁期間中の給与がどう計算されるのかは、雇用契約で確認したい。
求人で確認すべき待遇は給与だけではないマグロ漁船では、船上生活に必要な費用が会社負担になる場合もある。
例えば、株式会社太和の求人では、航海中の食事が無料で1日3~4食提供され、船内Wi-Fiも利用できるとしている。
焼津まぐろ漁業株式会社では、社員寮の用意や海技免状などの資格取得支援を行っている。
こうした待遇は、手元に残るお金や長期的なキャリア形成に関わる。
応募前には、次の項目を確認しておきたい。
- 航海中の食費や生活用品の負担
- 休漁期の基本給・最低保証
- 航海終了後の休暇日数
- 社会保険・船員保険の加入
- 賞与と歩合給の支給時期
- 資格取得にかかる費用の補助
【2026年最新求人を比較】未経験からマグロ漁船に乗る方法
マグロ漁船は、経験者だけの仕事ではない。
2026年の採用情報を見ると、甲板員や機関員など、未経験者を対象とする求人も掲載されている。
ここでは、実際の募集条件を比較する。
主要なマグロ漁船求人と給与条件1. 焼津まぐろ漁業株式会社
- 年収目安:300万~500万円程度
- 船種:遠洋まぐろ延縄漁船
- 募集職種:甲板員、機関員、船内事務担当者など
- 資格:特になし、海技資格保有者は優遇
- 航海期間:1航海約10か月
- 航海終了後:40~50日程度の休暇
- 福利厚生:船員保険、雇用保険、厚生年金、社員寮
- 資格取得支援:あり
公式採用情報では、新卒・中途の両方で乗組員を募集している。未経験者を将来の幹部候補として育成する方針も示されている。
2. 株式会社太和
- 求人年収:300万~600万円
- 初年度の目安:300万~400万円程度
- 船種:遠洋まぐろ延縄漁船
- 漁期中:最低保証25万円/月+歩合
- 休漁期:12万~13万円/月
- 航海期間:10か月程度
- 資格取得支援:あり
- 航海中の食事:無料
- 船内Wi-Fi:あり
海技士免状の取得や実務経験によるキャリアアップを重視した募集だ。求人票の年収上限600万円は、初年度の収入保証ではない点に注意したい。
3. 株式会社三高(近海まぐろ漁業)
- 月給:25万円以上
- 年収:300万~400万円
- 船種:近海まぐろ延縄漁船
- 1航海:約4週間
- 航海中:週1日休み
- 帰港後:次の出港まで約3日
- 賞与:操業成績に応じた配当あり
- 資格:未資格者も応募可能、取得支援あり
短い航海期間と比較的頻繁な帰港が特徴だ。遠洋船とは異なる生活スタイルを希望する人にとって、比較対象になる。
未経験者が応募前に確認したい5つの条件マグロ漁船の求人を選ぶ際には、次の5点を重視したい。
① 最低保証額が明確か
歩合制の場合、漁獲成績によって収入が変わる。最低保証額が明示されている求人は、生活費の計画を立てやすい。
② 初年度の年収が明示されているか
年収300万~600万円という募集条件でも、初年度は300万~400万円程度というケースがある。新人の実績を確認したい。
③ 休漁期の給与があるか
航海中の月給が高くても、休漁期に収入が減る場合がある。年間の総支給額で比較することが重要だ。
④ 資格取得を支援しているか
海技資格は昇給や役職への昇進に関係する。取得費用や取得後の給与体系まで確認したい。
⑤ 船内生活の環境が整っているか
食事、居住スペース、通信環境、医療対応、船員保険などは長期航海の生活を左右する。
2026年の漁業環境から考える将来性マグロ漁船の給与は、乗組員個人の能力だけでなく、漁業を取り巻く経済環境にも左右される。
水産庁の2026年10月資料によると、2024年の漁獲量は遠洋まぐろはえ縄漁業が約6万2,000トン、近海まぐろはえ縄漁業が約3万2,000トンだった。
また、漁船1隻当たりの漁獲量は、遠洋が約395トン、近海が約153トンとなっている。
同資料では、まぐろ類の漁獲量が長期的に減少傾向にある一方、1隻当たりの漁獲量はおおむね横ばいと説明している。
経営面では燃油費や人件費の上昇が課題となっている。2025年後半からは魚価の上昇傾向も見られるが、売上原価の増加に見合う水揚げを確保できるかが重要だ。
こうした環境では、歩合給の高い船を選ぶだけでなく、安定した経営基盤や給与制度を持つ会社を選ぶことが収入の安定につながる。
【マグロ漁船の給料】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マグロ漁船の新人の月収はいくらですか?
A1:遠洋まぐろ漁船では、求人情報を参考にすると年収300万~500万円程度が一つの目安となる。月額に単純換算すると25万~約41万7,000円だ。ただし、実際の月収は歩合給、航海期間、休漁期の待遇によって異なる。
Q2:マグロ漁船で年収1,000万円を稼ぐことはできますか?
A2:船長や機関長などの上位職では、高収入を得る可能性がある。日本かつお・まぐろ漁業協同組合の2017年のキャリアモデルには、船長・機関長で年収770万~1,000万円以上という例が紹介されている。ただし、これは過去の参考値であり、2026年の標準給与や保証額ではない。
Q3:マグロ漁船は未経験でも働けますか?
A3:働ける。焼津まぐろ漁業株式会社や株式会社太和など、未経験者を歓迎する求人がある。学歴や漁業経験を問わない募集もあり、入社後に仕事を覚えながら資格取得を目指せる。ただし、見習い期間中の給与条件は応募前に確認したい。
Q4:マグロ漁船は休漁期にも給料が出ますか?
A4:会社によって異なる。株式会社太和の2026年求人では、休漁期に月12万~13万円を支給すると案内している。一方、すべての会社が同じ条件ではないため、雇用契約で確認する必要がある。
2026年のマグロ漁船の給料は、新人で年収300万~500万円程度が求人情報から見た一つの目安となる。ただし、遠洋と近海では航海期間や給与制度が異なり、経験、海技資格、役職、水揚げ成績によって収入には大きな差が生まれる。
特に注目したいのは、固定給と歩合給の組み合わせだ。水揚げによって収入を伸ばせる一方、魚価や操業成績による変動もある。加えて、2026年2月から1人歩船員の特定最低賃金が月額22万4,000円となったことも、求人条件を判断する際の重要な基準になる。
【プロの結論】
マグロ漁船への就職で失敗しないためには、次の3点を優先したい。
1. 安定収入を求めるなら:固定給や最低保証が明確で、休漁期の給与も設定されている会社を選ぶ。
2. 高収入を目指すなら:歩合の計算方法、水揚げ実績、海技資格取得後の昇給制度を確認する。
3. 未経験から長く働きたいなら:資格取得支援、船内環境、休暇制度が整った会社を選ぶ。
マグロ漁船は、単に長期間海に出れば高収入を得られる仕事ではない。専門技術を身につけ、経験を積み、船内で責任ある役職を担うことで収入を伸ばしていく職業だ。
求人票の最高年収だけに目を向けず、初年度の給与、歩合の仕組み、休漁期の待遇、将来の昇給まで比較することが、納得できる就職先を見つける近道となる。